会員専用

このコンテンツの閲覧には
会員専用ID・PWが必要です。

神経治療最前線 海外学会参加報告

International Stroke Conference 2026

ISC2026

New Orleans, Louisiana, USA
2026年2月4日〜6日

杏林大学医学部付属病院 脳卒中医学教室
中西 郁

はじめに

 今回私は、2026年2月4日から6日にかけて、アメリカ合衆国ルイジアナ州ニューオリンズで開催されたInternational Stroke Conference 2026(ISC 2026)に参加いたしました。ISCは脳卒中領域における世界最大規模の国際学会であり、毎年最新の臨床試験結果や治療戦略が数多く報告される場として知られています。今回、当教室からは平野教授、河野准教授、私の3名で参加いたしました。私自身、アメリカを訪れるのは14歳以来であり、実に22年ぶりとなりました。また、国際学会への参加は11th Japan-Korea Joint Stroke Conference以来2回目で、ISCへの参加は今回が初めてでした。世界の第一線で活躍されている先生方の発表を直接聞くことができ、大変刺激的で貴重な経験となりました。

ISC会場の雰囲気

 会場に到着してまず感じたことは、「日本よりも派手!広い!服装が自由!」ということでした。Main Eventが行われるホールは非常に広く、メインセッションでは連日ほぼ満席状態でした。Science & Technology Hall、いわゆる企業展示ブースも豪勢で、なんとMobile Stroke Treatment Unitが展示されていました。ただし、かなり大型の車両であり、日本での導入は現実的には難しいのではないかとも感じました。今回は、3日間全日程に参加することができ、事前に計画を立ててMain Eventを中心に聴講しました。

写真1:学会会場:Ernest N. Morial Convention Center

写真1:学会会場:Ernest N. Morial Convention Center

写真2:ポスター会場にて(左から狩野修先生、筆者)

写真2:#ISC 26のオブジェ

写真2:#ISC 26のオブジェ

写真3:Mobile Stroke Treatment Unit

ISC2026のメイントピック

 ISC2026では、3日間にわたり毎日「Main Event」が開催され、最新の臨床試験の結果が報告されていました。

2月4日の「Opening Main Event」
このセッションでは、CHOICE-2、FASTEST、CREST-2の結果が報告されました。
CHOICE-2は、血栓回収療法が成功したLVOに対して、引き続いて血栓溶解薬の動脈内投与を追加することで、慢性期の機能予後がさらに改善するかを検討した試験です。結果として、追加治療により90日後の機能予後良好率が改善し、症候性頭蓋内出血の増加は認められず、QOLやADL良好者の割合も改善することが報告されました。私自身も血栓回収療法を行う身として、今後の治療戦略に影響を与える可能性があると感じました。
FASTESTは、発症超急性期の脳出血に対する遺伝子組換え活性化第VII因子(rFZa)の有効性と安全性を検討した試験です。spot sign陽性の患者に対して発症2時間以内にrFZaを投与することで、血腫増大が抑制されることが示されました。一方で、プラセボと比較して重篤な血栓塞栓性合併症のリスクがわずかに増加し、全体として機能的転帰の改善には至らなかったと報告されました。血腫増大を抑えることが必ずしも転帰改善につながるわけではなく、治療の難しさを感じる内容でした。
CREST-2は、無症候性頸動脈高度狭窄症に対して、強化内科治療に加えて血行再建術(CASまたはCEA)を行うことの有用性を検討した試験です。ISC2026ではサブスタディの結果が報告され、血行再建術を追加しても認知機能の改善は示されなかったと報告されました。無症候性病変への介入は長年議論されているテーマであり、内科的治療の重要性を再認識いたしました。

2月5日「Thursday Main Event」
このセッションでは、OCEANIC-STROKE、EMBOLISE、LAISの結果が報告されました。
OCEANIC-STROKEは、第XI因子(FXIa)阻害薬(Asundexian)の非心原性脳梗塞または高リスクTIA患者における再発予防効果を検証した試験です。Asundexian は抗血小板療法を受けている非心原性脳梗塞または高リスクTIA患者における脳梗塞再発の減少と関連し、プラセボと比較して重大な出血の増加は見られないと報告されました。新しい抗血栓治療薬として今後の発展が楽しみであると感じました。
EMBOLISEは、慢性硬膜下血腫に対するOnyxを用いた中硬膜動脈塞栓術の有効性を検証した試験です。今回は軽症患者を対象とした結果が報告され、90日時点での有害事象(手術再介入、臨床転帰不良・悪化)のリスクを軽減し、経過観察よりも優れた結果となりました。安全かつ効果的な治療オプションであり、治療選択肢が広がる可能性を感じました。
LAISは、急性期脳梗塞に対する新しい神経保護薬であるloberamisalの効果を検証した研究です。結果は、90日後の機能的転帰が良好な患者の割合が増加し、安全性も良好であることが示されました。神経保護薬は有効性が示されにくい印象がありましたが、明るい結果が報告され、今後の実臨床への適応が期待されます。

2月6日「Closing Main Event」
このセッションでは、発症24時間以内にMeVOに対して血管内血栓除去術を行うことで、標準治療のみと比較して90日後の機能的転帰が有意に改善し、死亡率や症候性頭蓋内出血の増加は認められなかったと報告されました。MeVOは実臨床でも治療適応を悩む場面が少なくなく、今回の結果が今後の治療適応拡大につながることを期待したいです。

写真3:学会のメイン会場

写真4:学会のメイン会場

自身の発表について

 私は今回、LVOにおいてCTAやMRAでは描出されない「閉塞部位より遠位の見えない血管」を可視化する画像技術に関して、ポスター発表として演題採択していただきました。発表中には2名の先生方から質問をいただきました。英語での質疑応答は緊張もあり、同行していただいた平野教授に助けていただきつつ、かなりたどたどしい返答になってしまいましたが、自分なりに精一杯対応しました。
今回の経験を通じて、自身の英語力不足を改めて痛感いたしました。国際学会で議論するためには、最低限の語学力が不可欠であり、英語への苦手意識からこれまで避けがちであった点も含め、今後の課題が明確になった貴重な機会でした。

写真5:自身のポスター提示

写真5:自身のポスター提示

ニューオリンズ観光

 学会期間中、開催地であるニューオリンズの文化にも触れることができました。フレンチクオーターのバーボンストリートでは路上演奏が行われており、街を歩いているだけでも音楽が自然に耳に入ってくるような雰囲気でした。また日中から様々な店でジャズの生演奏が行われており、ニューオリンズならではの魅力を感じました。
さらに滞在中はマルディグラ(2月から3月に開催されるカーニバル)の時期と重なっており、街全体が夜中まで非常に賑わっていました。こうした街の活気に触れられたことも良い思い出となりました。

写真6:夜のBourbon Street

写真6:夜のBourbon Street

終わりに

今回のISC2026参加は、非常に貴重な経験となりました。世界の第一線で発表される最新の知見に触れることができ、脳卒中治療が日々進歩していることを改めて認識しました。特に、FASTESTとOCEANIC-STROKEは当施設も参加していた臨床試験であり、自施設での日々の診療が世界的なエビデンス構築に貢献していることを実感することができました。また、自分自身の研究を国際学会で発表できたことは大きな励みとなりました。
国際学会は、最新の知識を学ぶだけでなく、多くの刺激を受け、今後の方向性を考える良い機会になると感じました。参加できる環境があるのであれば、躊躇せずに挑戦することは必ず将来の糧になると思います。これを読んで興味を持たれた方は、ぜひチャレンジしてみてください。

▲Page Top