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神経治療最前線 海外学会参加報告

17th International Congress of Neuroimmunology

ISNI

Makuhari, Chiba, Japan
2025年10月6日〜8日

東北大学医学部医学系研究科神経内科学分野
山ア 直也

はじめに

 2025年10月6日から10月8日にかけて、国立精神・神経研究センターの山村隆先生を大会長として千葉県の幕張メッセで開催された、17th International Congress of Neuroimmunology (ISNI)に参加しました。神経免疫疾患に関する基礎研究を中心に、神経病理、臨床研究、神経変性疾患に対する免疫学的アプローチ、なども含んだ裾野の広い学会でした。私は博士課程大学院生の身分ですが、このような大変貴重な機会をいただきましたので、僭越ながら参加報告をさせていただきます。

各種講演とイベントについて

 私にとっては初めての国際学会でした。幕張は10月ながら日中は汗ばむような気温で、しかし浜風が心地よく過ごしやすい気候でした。今年度は8月にも日本神経免疫学会が同じ会場で行われたばかりだったため、国際学会と気負わずに気軽な気持ちで参加しました。それでも世界中のエキスパートが一堂に会する会場ではいつもと一味違った熱気が肌で感じられ、日本にいることを忘れるような空間でした。講演は各種神経免疫疾患にフォーカスした各論に加えて豊富な基礎研究の知見が発表され、レベルの高さについていくのが大変でした。また、10月7日のMeet the expertsでは、神経病理学の大家であるHans Lassmann先生から10-20名の少人数ディスカッション形式で直接お話を伺う貴重な機会があり、中枢神経炎症性脱髄疾患の発展に関して簡単にお話しいただいた後に様々な質問が飛び交いました。私自身も研究テーマの一つである視神経脊髄炎の動物モデルに関する質問をさせていただき、これに直接お答えいただいたことは大きな喜びでした。聴衆のすぐ目の前に手ぶらで立たれて、一の質問に対して十の答えを澱みなく返すお姿が印象に残っています。10月6日夜にはホテルニューオータニでGala dinnerが催され、会場内は多言語が入り混じり、活気で周りの声が聞き取れない程でした。Opening ceremonyでは歌舞伎が披露され、これも会場から大きな拍手を受けていました。なんといっても最も注目を集めたのは、この朝に会場でご講演された坂口志文先生のノーベル生理学・医学賞受賞が発表された瞬間で、会場中から歓声と拍手が鳴り止みませんでした。

私の発表について

 私は中枢神経炎症性疾患におけるMyelin-oligodendrocyte glycoprotein (MOG)-IgAとMOG-IgMの意義に関するポスター発表を行いました。MOG-IgG陽性例に高頻度で検出されるMOG-IgAやMOG-IgMが、MOG-IgG陰性ながらMOG抗体関連疾患が疑われた症例の一部にも検出されるという内容でした。既報が少ないニッチな内容であったため一人でも興味を持ってくれる人がいればという気持ちでポスターの前に立ちましたが、幸いにも多くの先生から様々なご質問をいただき、共同研究に関するアイデアも含めて研究を前に進めるための有意義な議論ができました。特に、この研究において大いに参考にした先行研究の著者であるAnne-Katrin Probstel先生と直接お話できたことは望外の喜びで、バイオマーカーとしての期待や、MOG抗体関連疾患の疾患概念拡張に関する議論を深めることができました。Anne-Katrin先生は今年度の学会でmid-career awardを受賞されるなど世界の最前線でご活躍されており、コメントを頂けたことは非常に光栄でした。私が今までに参加してきた学会と比べて最も違いを感じたのはこのポスターセッションで、時間が経つごとにむしろ聴衆がどんどん増え続け (直後に懇親会が控えていたからかもしれませんが)、非常に熱気のあるセッションでした。予め発表時間が決められている形式とは異なり、一対一でプレゼンテーションを繰り返していくスピード感は新鮮に感じました。

おわりに

 私は日本で生まれ日本で育った非英語話者で、言語の不安を抱きながら参加した国際学会でしたが、興味を同じくして同じ分野を研究する者同士にとって言語の壁は想定よりも小さくなることを実感しました。とはいえ確実に壁はあり、もっと適切な表現や質問をしたかったという後悔もありますので、次の機会に向けたトレーニングの必要性を感じました。
総じて、研究を前に進めるためのこれ以上ない機会になりました。次のチャンスを掴めるように今後とも努力を重ねていければと思います。改めて、このような機会を与えていただき誠にありがとうございました。

Fig.1

写真1
海浜幕張駅前 バクハリ君とISNI

Fig.2

写真2
筆者とポスター

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