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神経治療最前線 海外学会参加報告

The 71st AAN Annual Meeting 2019

第71回米国神経学会年次学術集会に参加して

西田陽一郎
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科脳神経病態学分野(神経内科)

American Academy of Neurology (AAN) Annual Meeting 2019
Pennsylvania Convention Center, Philadelphia, Pennsylvania
2019年3月26日〜31日

第71回米国神経学会年次学術集会に参加して

2019年5月4-10日にPhiladelphiaコンベンションセンターにて、第71回米国神経学会年次学術集会(American Academy of Neurology: AAN Annual Meeting)が開催されました(写真)。日本のゴールデンウィーク(GW)10連休の後半と、GW後の平日数日に職場のお休みを頂き、学術集会の前半部分に参加して参りました。今後初めて本学術集会に参加される方のお役に立てばと思い、この度、学会参加記を書かせて頂くこととなりました。駄文にお付き合い頂けますと幸いです。
GW中のため空港の混雑を覚悟し渡米時はかなり朝早く家を出ましたが、GWも既に後半のためか、比較的朝早い飛行機だったためか、全くと言ってよいほど空港も飛行機内も混雑はなく、むしろ空いていて幸先の良い出発でした。これまで北米で開催される学会には、Society for Neuroscience (SfN)のannual meetingやAlzheimer's Association International Conference (AAIC)にそれぞれ数回ずつ参加しておりますが、AAN Annual Meetingには初めての参加でしたので、どのような学会なのか、どのような勉強ができるのか非常に興味があり、楽しみにしておりました。学会のホームページから事前にダウンロードできる”2019 EARLY LOOK”という300ページ近い資料を渡米前に眺めておりましたが、私が見慣れていないためか、もの凄く多いセッション・プログラムのどれを聴講しにいくのがよいのか絞ることができないまま学会場に着きました。学会場は海外らしく非常に広く、端から端まで歩くと15分ぐらいはかかりそうな距離で、たくさんの部屋で様々なプログラムが開催されていました。参加登録のそばには”2019 EARLY LOOK”の冊子に加えて”2019 AAN Annual Meeting On-site Guide”というやはり300ページほどある冊子も山積みされていました。しかし、分厚い両者を一生懸命眺めても、各講演の開催場所は分かりにくく、どこで何をやっているのかと最初はかなり面食らいました。日本でご挨拶させて頂いたことのある先生に会場でお会いした際に、”ROOM LOCATOR”という50ページほどの小冊子が見やすいことを伺い、ようやく興味のある講演を聴講しに行けるようになりました。軽さと記載項目とから判断すると、印刷物としてはこの小冊子が一番のお勧めと感じました。なお、”AANextra”というお手頃な軽さの冊子が学会期間中の毎朝、会場入り口などで配られており当日のエッセンスがわかり易く書かれていました。しかし、基本的には”ROOM LOCATOR”で講演内容と開催場所を確認するのが効率的と私には思えました。
この学会のスケジュールは、Program (Course, Invited science session, Neuroscience in the clinic session, Poster session, Scientific session), Plenary session, Experimental learning area, Section meetingsに大別されます。Plenary sessionは1日ずつHot topics, Presidential, Contemporary clinical issues, Clinical trials, Frontiers in neuroscience, Controversies in Neurology, Neurology year in reviewと括られて行われていました。学会前半での印象とはなりますが、臨床に直結している内容で脳神経内科学分野から幅広く講演が行われており、海外で行われている治験の情報も知ることができて非常に興味深かったです。Plenary session以外では私はCourseを聴講している時間が長かったのですが、演者が講演している最中にliveで講演スライドを自分のパソコンで見ることができるのが非常に助かりました。やや文字の多いスライドで全てを読みきれなかった際や、ノートにメモをしていたら途中で切り替わってしまった際などに、自分のパソコンで少し講演スライドを巻き戻せば確認できて大変勉強しやすいと感じました。また、一方向的に講演・講義が行われるだけではなく、途中で聴衆皆がmobile appやパソコンを用いて参加できる診断・治療方針などに関する設問が用意されており、聴衆が概ねどのように考えているのかを知れたり、自分の考えを整理することもでき、また、ある程度の緊張感を保ちながら聴講できて楽しかったです。全体的に非常にわかり易くて教育的な内容が多く、どの分野も効率よく勉強することができ、知識も整理されて大変ありがたい学会と実感しました。また講演後の質疑応答時間も充実しており、教育的に感じました。
私にとっては初めてのAAN Annual Meetingへの参加というだけでなく、初めてのPhiladelphia訪問となりましたが、観光する時間も惜しいほど楽しく充実した学会でした。学会場にはAANの各国別の会員数や、2018年の同学術集会での国別の演題数が大きなパネルで掲示されていましたが、国別の会員数はアメリカの27,353人が群を抜いて多いのですが、日本人は290人とのことでアジアではインド、サウジアラビアに次いで3番目に多いとのことでした。後に配信されたメールによりますと、今回の学術集会には100以上の国から約15,000人が参加し、7つのplenary sessionの他にも、250以上の教育プログラム、3,000以上の発表があったとのことでした。学会場にて聴講できるセッション・プログラム数には限りがありますが、Courseなどで使われたスライドやシラバスは学会後も1年間はインターネットを通じてアクセスできるため、帰国後も勉強できる点は素晴らしいと思いました。脳神経内科学の知識を増やし、整理するためにも参加する価値が非常に高い学会と感じました。学会参加費と渡航費・滞在費とを併せるとある程度の出費とはなりますが、脳神経内科初学者にとっても非常に勉強になり、有意義な時間が過ごせることと思います。 この学会参加記が来年以降にAAN Annual Meetingに初めて参加される方のご参考になる、もしくはご参加への動機づけとなりますと幸いです。

写真

第71回米国神経学会年次学術集会

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