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神経治療最前線 海外学会参加報告

MDS2019

International Congress of Parkinson’s Disease and Movement Disorders 2019

愛媛大学医学部附属病院臨床薬理神経内科
細川 裕子

International Congress of Parkinson’s Disease and Movement Disorders 2019
Nice Acropolis Convention Centre Center, Nice, France
22-26 September, 2019

International Congress of Parkinson’s Disease and
Movement Disorders 2019

 2019年9月22日〜26日の間、フランスのニースで開催されたパーキンソン病・運動障害疾患コングレス(International Congress of Parkinson’s Disease and Movement Disorders 2019)に参加させていただきましたのでご報告します。

 International Parkinson and Movement Disorder Societyはパーキンソン病やその他の運動障害疾患に関する世界最大規模の学会で、今年は世界各地から6000人もの参加がありました。日本でもMDSJが毎年開催されており、PDの診療に関わる人にとっては身近な学会のようです。私は国際学会に初参加でしたので、準備から移動まで期待と不安でいっぱいでした。またポスター発表もありましたので、準備段階から上級医に1から10まで教えていただき、やっとのことで発表にこぎつけたという印象です。

 学会1日目は、人の多さと外国人の背の高さに驚いて、全世界から人が集まっていることを考えると不思議な気持ちになりました。手続きを終えると、一番大きなホールに向かい、plenary sessionに参加しました。早期、進行期PDにおける治療に関しての講演で、PDのQOLに大きくかかわる非運動症状や、胃内容排泄障害がレボドパ血中濃度に及ぼす影響、日本でも承認された新規のMAO-B阻害薬・サフィナミドの効果、PDにおける認知症(PDNC、PDMCIとPDD)に関してなど、さまざまな話題をいろんな切り口からお話され、理解を深めることができました。

 2日目には同行していた上級医の先生のポスター発表があり、早朝からポスターを貼りに向かいました。驚くことに、ポスター会場はテラスになっていて、風よけのビニールで囲われた敷地に所狭しとポスターが並んでいました。ポスターを貼ったのは良いのですが、5分もすると汗が噴き出してくるほど暑くて、みんな苦労していました。サフィナミドなどの新規抗パーキンソン病薬やレボドパ持続皮下注などの新規デバイス治療に関する最新の話題も多かったですが、肥満とPDの認知機能障害、睡眠障害とデバイス治療の関係など既存の治療を新しい視点で検討した発表も多く、知見を深めることができました。夕方にはparallel sessionのataxiaに参加しました。各症例を提示し、ataxiaにプラスしてどのような臨床症状があるかによって鑑別診断を挙げていて、例えばataxiaとparkinsonismを合併している場合、SCA2,3やMSA、Wilson病、FXTAS、NPC、CPX等が挙げられていました。実際に診断に難渋している症例を想起しながら勉強でき、今後の実臨床にとても役立つ講演でした。

 3日目は学会の合間に観光も行きました。しかしいざ移動しようとトラム(市内電車)を待っていると、親切なフランス人が「今日はストでトラムは出ないよ」と教えてくれて、愕然としました。バスは動いているだろうとバス停で待っていましたがバスも来ず、幸いにも電車は動いており、電車で移動しました。モナコに行って大聖堂や海洋博物館に行きましたが、特に思い出深いのはエズ村でした。エズ村は山の上にあって普通ならバスで行くのですが、今回はバスがないためニーチェの道というハイキングコースを1時間かけて登りました。愛媛の石鎚山を登っているくらい、驚くほどの急斜面で道の険しさに何度も心が折れそうになりました。しかし到着すると、おとぎの国のようなかわいらしい石造りの街並みが広がっていて、頂上から眺める夕日はとても綺麗でした。ストのおかげで本物のエズを体験できたと思っています。

 4日目は私の発表日でした。私はDaTSPECTと睡眠障害の関係に関する発表を行い、睡眠障害は視床下部での概日リズム調節障害や、入眠時に心拍数の低下が起こらない自律神経障害も関係するのではないかという考察をしました。参加者との議論の中で、自律神経障害に認知機能低下を伴うことも言われており、今回の研究で認知機能に関しては考察をしていない点を指摘されました。実際、会場のポスターに自律神経障害と認知機能障害、PDMCIに関する演題も見つけ、今後の研究の参考になりました。英語の質問には十分に答えることができず、先生方に助け舟を出していただきましたので、次回は自分の言葉で説明できるようにしたいです。この日の夜はMDSの一大イベントといわれる、ビデオチャレンジがありました。会場は超満員で、参加者はみんなワインを飲んだ後のほろ酔い気分で見ていました。第一問目は、人間ではなく馬のhemifacial spasmビデオで始まり非常に盛り上がりました。金メダルを受賞したイランの症例は3歳男児のドパミントランスポーター欠損症で、激しい舞踏運動やプラミペキソールで改善した点などから推理されていました。他にも光過敏性てんかんの症例ではPokemon syndromeの紹介でピカチュウの映像が流れたりと、エンターテイメント性に富んでいました。貴重な症例の動画を見ることができただけでなく、参加者が診察せずとも診断を導いていく様子が素晴らしく、とても貴重な体験でした。

 MDSに参加して、これまで自分は学会発表を目標としていたところがあった点を反省しました。学会会場で得た新しい知識や視点など、次なる課題を持ち帰って今後の自分の糧にしていくことが重要だと感じました。今回の貴重な経験を今後の活動に生かしていきたいと思います。

写真1:コート・ダジュールの風景。天気が良く、海がとてもきれいでした。

第5回世界パーキンソン病学会議写真1

写真2:学会場前での筆者。緊張しています。

第5回世界パーキンソン病学会議写真2

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