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神経治療最前線 海外学会参加報告

3rd EAN Congress

3rd Congress of the European Academy of Neurology

黒田 宙
東北大学大学院神経内科

3rd Congress of the European Academy of Neurology
Amsterdam,Netherlands
2017年6月24日〜27日

1.はじめに

汎欧州的な臨床神経学会として従来European Neurological Society (ENS)とEuropean Federation of Neurological Societies (EFNS)の二者が存在していた。2014年に両者が統合されEuropean Academy of Neurology (EAN)が発足、第1回EAN Congressは2015年ドイツ・ベルリンで開催された。2017年6月24日〜27日の4日間、第3回EAN Congressがオランダ・アムステルダムで開催された。

2.EAN Congressの概要

臨床神経学に関する幅広い分野の発表がなされる一方で、内容の新規性や基礎的な発表の充実という点では分野毎の学会(MDS, ADPD, ECTRIMSなど)に一歩譲る。しかし、各分野の碩学が多数参加することや、比較的コンパクトな学会であることから、各分野における知識のアップデートや研究の潮流を大筋でつかむのに適している。その他、臨床研究一般についてのfocused workshop(例として大規模臨床試験のデザインやoutcome measure設定のノウハウなど)など実際に臨床研究を進める上で参考になるセッションも設定されている。神経学の歴史が長い欧州ならではのプログラムとしてhistory of neurologyといったセッションが存在するのも本学会の特徴と言える。
自分は神経免疫領域のセッション・シンポジウムに加えてgeneral neurologyに関するteaching courseなどにも参加した。その内容について簡単に触れる。

(1) 自己免疫性てんかん

自己免疫性てんかんについての臨床型、病原性の機序、治療についてのレビュー。自己抗体としては抗NMDAR抗体、抗AMPAR抗体、抗LGI1抗体、抗CASPR2抗体、抗GAD65抗体、抗GABAAR抗体、抗GABABR抗体、抗GlyR抗体などが取り上げられていた。

(2) 多発性硬化症の治療戦略

多発性硬化症(MS)の治療法開発が進み、疾患修飾薬として多数の薬剤を使用することができるようになった。それとともにどのように治療戦略を組み立てていくかが重要になってきている。このセッションではescalation therapy, induction therapy, combined therapy等について、その背景となる理論と具体的な方策、outcome measureの設定や安全性評価について各々の立場からの発表があった。

(3) 全身疾患に伴う神経疾患

臨床神経内科医として知っておくべき内科疾患とそれに伴う神経障害のレビュー。疾患が多岐にわたるため、このセッションで取り上げられたのは、血管炎性ニューロパチーを初めとするリウマチ性疾患に関連する神経障害、代謝性脳症、特殊な背景疾患(血液疾患、消化器疾患、悪性腫瘍、遺伝疾患など)による血管障害、傍腫瘍神経症候群などであった。

(4) その他

上記セッションの合間に、血管障害、てんかん、変性疾患に関するシンポジウムなどにも参加した。

3.おわりに

日本からEANへの参加者はまだ少ないが、本稿でも言及したように臨床神経内科医が参加する意義のある学会である。今後も毎年6月に欧州の主要都市で開催され、2018年はポルトガル・リスボン、2019年はノルウェー・オスロでの開催が決定している。

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