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神経治療最前線 海外学会参加報告

13th AD/PD 2017

The 13th International Conference on Alzheimer's and Parkinson's Diseases and Related Neurological Disorders

前田哲也
岩手医科大学医学部内科学講座神経内科・老年科分野

The 13th International Conference on Alzheimer's and Parkinson's Diseases and Related Neurological Disorders
Austria Centre, Vienna, Austria
2017年3月29日〜4月2日

1.はじめに

 The 13th International Conference on Alzheimer's and Parkinson's Diseases and Related Neurological Disorders、通称、ADPDが2017年3月29日から4月2日の期間、オーストリア、ウイーンで開催された(写真1)。本学会は神経変性疾患の双璧、Alzheimer病とParkinson病を研究対象とした学会である。年度またぎの忙しないなか、主にParkinson病関連セッションに参加してきたので、治療関連の話題を紹介する。なお、本学会は例年、Alzheimer研究者の参加がParkinson病研究者より多く、演題およびトピックも同様であることから、やや物足りなく感じる方もいると思われるがご容赦願いたい。

写真1:会場風景

2.Current developments in the treatment of Parkinson’s disease ? from disease modification to prevention?

March 31, 2017

1)Parkinson病治療の変遷

 ドパミン補充療法が始まって50年が経過した。またJames Parkinsonが“An Essay of the Shaking Palsy”を著してから今年が200年目の節目である。インスブルック医科大学のWerner Poewe教授による講演ではこれらを記念してドパミン補充療法の進化に関して時代変遷と現在の開発状況が報告された。
1950年代にParkinson病の線条体でドパミンが減少していることが発見された。レボドパがParkinson病治療に用いられるようになって以来、現在もなお、ゴールドスタンダードの座は揺るがない。すなわち運動症状を改善する最も有効な薬物療法である。しかし、レボドパの長期使用は運動合併症を招いた。1980年代から今日まで、レボドパの至適体内動態を得るべく drug delivery に対して注がれてきた研究努力は、最新のレボドパおよびその関連薬剤の製剤進化を導き現在もなお開発は続いている。

2)新たなParkinson病治療薬の紹介

a)徐放化レボドパ経口薬

 レボドパ・カルビドパ配合薬をマイクロスフィア化しそれぞれに放出されるタイミングを調整したカプセル製剤が、2015年に米国で、その半年後には欧州で発売が開始された。また新規の徐放製剤2剤、シート状の製剤技術を駆使した製剤1剤が紹介された。

b)COMT阻害薬

 欧州で開発された1日1回服用ですむCOMT阻害薬の良好な臨床試験結果が紹介された。

c)レボドパ吸入薬

 米国で開発されたレボドパ吸入薬の第2相臨床試験結果が紹介され、引き続いて現在進行中の第3相臨床試験が紹介された。

d)レボドパ持続皮下注薬

 米国で開発されているデバイスエイドの持続皮下注製剤が紹介された。

3)移植療法

 1980年代に始まった薬物療法とは異なるドパミン補充方法として、移植療法についても紹介があった。ドパミン産生細胞の移植療法、遺伝子移植療法に関して時代変遷とともに直面する問題点が挙げられ、レヴィー病理の細胞間伝播やウイルスベクターに関する研究の進展が示された。

4)非ドパミン療法と脳深部刺激療法

 ここ10年の間にドパミン神経伝達を介さず治療効果を発揮する薬剤開発が盛んに行われている。しかし残念ながらまだ十分な有効性が示されている薬剤はない。本邦においてのみ用いられている薬剤についても紹介があった。対照的に脳深部刺激療法も非ドパミン系の治療方法として紹介され、幾つものランダム化比較試験により薬物療法に比べても運動合併症に対する優越性が示されていた。現在もなお、刺激条件の改良、ハード面の開発、刺激標的部位の検討が続けられている。

5)そして未来へ

 まだ達成できていない問題は1990年代のDATATOPに端を発する神経保護療法である。かつて行われた臨床試験の数々はすべて失敗に終わっており、新たな発想と実現が期待される。αシヌクレインの病態獲得過程や輸送経路の研究により、病的αシヌクレインそのものを標的としたワクチン療法が現在、臨床試験が進行中である。それと同期するようにprodromal phaseの診断、検出するための取り組みも始まっている。Parkinson病発症リスクを有する人々への先制治療介入への期待が高まっている。

3.ADPD 2017 forum on novel approaches to disease-modifying therapies of PD: therapy of PD beyond neurotransmitter replacement. Can we stop progression?

March 31, 2017

本学会では毎日午後にADPD Forum 2017と題して、様々なテーマでシンポジウムが組まれていた。複数の演者がステージ上に準備されたソファーに聴衆に向かって半円形に座し(写真2)、モデレーター1名の進行によりそれぞれの立場からディスカッションを繰り広げる形式であった。予め準備されたスライドに沿って演者1名ずつプレゼンテーションを行い、最後に全員ステージ上でパネルディスカッションするという従来のスタイルではなく、より臨場感あるプログラムといえる体裁であった。
Parkinson病関連では現在、米国で行われているαシヌクレインのワクチン療法の話題が取り上げられていた。これから臨床試験へと進んでゆく上で求められる様々な課題についてディスカッションが繰り広げられた。

写真2:Forum

4.Diagnosis and management of DLB: fourth report of the DLB consortium

April 1, 2017

治療とは直接的な関係のないセッションであったが、おそらく今後発表される新たなDLBの臨床診断基準には、本邦発の神経放射線検査であるMIBG心筋シンチグラフィーが取り入れられると予想されるため、会場に参加した。コンソーシアムの代表者であるIan McKeith先生の講演であったが、結論からすると本学会では臨床診断基準の詳細は残念ながら発表されなかった(写真3)。

写真3:McKieth

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