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神経治療最前線 海外学会参加報告
ASENT ANNUAL MEETING 2025
ASENT2025年次総会参加及びPMDAワシントンD.C.事務所訪問報告
Hyatt Regency Bethesda in Bethesda, MD
2025年3月12〜14日
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター
病院 臨床研究・教育研修部門 臨床研究支援部
中村 治雅
1.はじめに
2025年3月12日から14日にかけて、米国メリーランド州ベセスダのHyatt Regency Bethesdaにて開催されたAmerican Society for Experimental Neurotherapeutics(ASENT)2025年次総会に、日本神経治療学会(JSNT)の国際化委員会より、藤原委員長、佐久嶋委員、中村の3名で参加しました。本会議は神経治療分野における医薬品等の開発に関連した国際的な最新知見が集まる重要な場であり、多数のアカデミア、企業、行政、患者団体が参加し、極めて活発な議論がなされる会議です。
2.主な参加目的
これまで長年にわたって構築されてきたJSNTとASENTとの関係継続とさらなる学会間連携の検討(共同シンポジウム、研究交流なども含めて)、国際的な神経治療研究の最新動向の把握、そしてJSNTの国際的プレゼンス強化などを目的で参加いたしました。
3.学術集会内容
期間中には、12を超えるシンポジウムが開かれていました。特に興味深かった内容としては、てんかん治療における遺伝子治療の現状と展望としてSCN8A変異による発達性てんかん脳症やDravet症候群に対する開発状況の解説や、希少疾患と患者中心の創薬に関連して、FDA主導のPFDD(Patient-Focused Drug Development)の現状、臨床開発全般について患者の声が組み込まれるようになってきたことや、実際の患者会での活動が紹介されました。また、音声解析と神経変性疾患の新しい評価法として、企業による音声バイオマーカーを用いた研究が紹介され、HD、ALS、PSPなど複数疾患で、音声の特徴と臨床スコアの相関が示されておりました。なお、日本からは藤原委員長がSYMPOSIUM: Autoimmune CNS Diseasesにおいて、Treatment of MOG Antibody-associated Disease (MOGAD): Existing Data and Challengesとしてご発表なさいました(写真1)。
ASENTの特徴である開発パイプラインのプレゼンテーション(企業や研究機関が最新の新規治療法開発や臨床試験の進捗を紹介するセッション)、さらにはポスターセッション、キャリアデザインや、ネットワーキングイベントなども開催されており、産官学患のさまざまなステイクホルダーが集い、最新の知識の習得と活発な議論が繰り広げられるとともに、後進の教育も含めて神経治療学を発展させようとする強い志を感じました。
4.ASENT理事等との交流
学会期間中、ASENTの新旧理事や事務局の皆様とも意見交換の機会が複数ありました。そこでは、JSNT学術集会へのASENTからの演者派遣や、来年度ASENTにおけるJSNTからのセッション提案の可能性、若手研究者へのトレーニング機会の国際協力なども話題になりました。こうした交流は、今後の両学会間の戦略的連携に向けた重要な第一歩となりました(写真2)。
5.今後への展望
ASENT年次総会は、昨今の米国の神経治療の現状把握のみならず、国際的ネットワーキング機会としても極めて有益でありました。本参加を通じて、神経治療の国際的動向を理解するとともに、ASENTとの関係深化に向けた重要な基盤づくりとなると考えられます。来年度以降もJSNT国際化委員会として積極的な参加を継続していく所存です。
医薬品医療機器総合機構のワシントンD.C.事務所訪問
ASENT年次総会参加とともに、2024年11月1日に開設されました医薬品医療機器総合機構(PMDA)のワシントンD.C.事務所を訪問し、所長の石黒氏をはじめとする関係者と面談いたしました。面談では、PMDAワシントンD.C.事務所の今後の活動方針や、日米における医薬品規制最新動向などについて情報交換を行うとともに、特に神経領域における新規治療法や薬剤開発の促進に関する意見交換を行いました。また、ワシントンD.C.事務所に対して学会として果たすべき役割や支援のあり方、ドラッグロス解決などに学会が果たしうる役割についても意見交換いたしました。今後も規制当局との連携を深めることで、日本を含めた国際的な神経疾患領域のイノベーションと新たな治療法への早期アクセス実現に貢献していきたいと考えます。
なお、訪問した翌日に、石黒所長がASENT会場にも足を運んでいただけたことから、ASENT理事にもご紹介させていただき、ワシントンD.C.事務所の開設や、今後の日本からの情報発信についてもアピールできたのではないかと思います。 我々の訪問日はPMDAワシントンD.C.事務所の玄関に初めて“PMDAパネル”が届いた日と重なりました。期せずして、我々JSNTとの撮影が、初めての記念写真となりました(写真3)。
写真1
写真2
写真3