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神経治療最前線 海外学会参加報告

International Stroke Conference 2024

International Stroke Conference 2024

International Stroke Conference 2024
Phoenix, Arizona, America
2024年2月7日-9日

杏林大学医学部脳卒中医学教室 齋藤幹人

International Stroke Conference 2024

 2月7日から9日に開催されたInternational Stroke Conference(ISC) 2024に参加しました。

 ISCは米国心臓協会/米国脳卒中協会が主催する世界最大規模の脳卒中国際会議です。毎年約70の国から5,000名近い医療関係者が集まり、脳卒中に関する最新の研究について発表が行われます。

 今回のISCはアリゾナ州フェニックスで開催されました。フェニックスはアリゾナ州最大の都であり、砂漠の中にありながらも全米有数の工業都市で、特に近年では半導体やEV産業が盛んなようです。フェニックスといえば、一年を通して太陽が降り注ぎ、多くのサボテンや赤い山々に囲まれ、有名な観光地であるグランドキャニオンやセドナの玄関口というイメージでしたが、残念ながら学会期間中は天候に恵まれず、日中は雨が降る場面が多く、朝晩は冷え込みが強いためコートが必要な状態でした。

 学会ではメインイベント会場を中心に聴講しました。今回のISCではLarge coreを呈した脳梗塞に対する機械的血栓回収療法の適応や有効性について多くの発表がありました。近年、日本発のRESCUE-Japan LIMITを始めとし、中国からのANGEL ASPECT、欧米からのSELECT2などLarge core症例への血栓回収療法の有効性が報告されていますが、Large Coreのうち、どのような特徴を持った症例で血栓回収療法が有効かについて議論されていました。特に本学会でtopicとして挙がっていたのがNet Water Uptakeという概念です。Net Water Uptakeは虚血組織の浮腫の程度を評価する指標であり、単純CTで虚血病巣と対側の正常脳組織のCT値から算出されます。Large Core症例において、早期虚血性変化の拡がりを評価するASPECTSスコアが同じ点数であっても、Net Water Uptakeが小さい症例(浮腫の程度が軽い)では、血栓回収療法で機能予後改善が得られる可能性が有意に高いことが報告されていました。このことは、従来虚血コアと考えられていたCT上の低吸収域の中には、虚血コアとペナンブラが混在しており、ペナンブラの残存が多く虚血コアの割合が少ない=虚血域の浮腫が少ない症例では、血栓回収療法で機能予後改善につながる可能性が高いという考察が大変興味深かったです。

 また、企業展示ブースではmobile stroke unitを始め、日本ではなかなか目にすることができないものが多く出展されていましたが、中でも驚いたのはportable MRIです。このportable MRIは磁場強度を極力抑えることでベッドサイドでの撮影が可能となっており、撮影開始から数分でipadなどのタブレット端末上でDWI/T1WI/T2WIなどの結果を確認できるようです。会場では実際に来場者がMRIを撮影していましたが、画像のクオリティも十分評価に耐えるもので、今後臨床現場への普及が期待されます。

 私のポスター発表は初日の夕方でした。ポスター会場では参加者やプレゼンターがコーヒーを片手にディスカッションしている姿が、海外の学会らしくとても印象的でした。私は急性期脳梗塞患者においてCT灌流画像が虚血コアを過大評価する事象(ゴースト虚血コア)について発表しました。本研究では側副血行が乏しいことによりコア拡大速度が大きいことがゴースト虚血コアと関連すると結論づけました。英語の質問に対してあらかじめ回答を用意していたものの、いざその場になると言いたいことを上手く伝えることができず、指導教官に助け舟を出していただきました。次回は自分の言葉でディスカッションが出来るようにしたいと強く思いました。

 ISC2024に参加して、脳卒中の最新の知見や世界の動向を知ることができました。また、海外の方で自分の研究に関心を持って質問してくれることも今後研究を発展させていくことのモチベーションとなりました。学会会場で得た新たな知識や視点を活かし、今後の活動の糧としていきたいと思います。来年(2025年)は2月5日-7日にロサンゼルスで開催されます。是非、参加をご検討ください。

写真1 会場となったPhoenix Convention Center

写真1. 会場となったPhoenix Convention Center

写真2 Portable MRI

写真2. Portable MRI

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