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神経治療最前線 海外学会参加報告

International Stroke Conference 2011

International Stroke Conference 2011報告

熊本大学大学院生命科学研究部神経内科学分野 平野照之

International Stroke Conference 2011
Los Angels, CA, USA
2011年2月8-11日

米国脳卒中協会(American Stroke Association)・米国心臓協会(American Heart Association)が主催するInternational Stroke Conference(ISC)は、脳卒中の臨床研究・基礎研究の最新の成果が発表される場です。2011年はミシガン大学のLewis Morgentstein教授が会長を務め、今年から始まったPre-Conferenceシンポジウムを皮切りに2月8日から3日半のプログラムが企画されていました。毎年、脳卒中の臨床において優れた成果をもたらした医師に与えられるWilliam M. Feiberg Awardは、オーストラリア・メルボルン大学のStephen Davis教授が受賞され、mismatchでのペナンブラ評価に基づくアルテプラーゼ療法の有効性を検討したEPITHET研究を主に紹介されました。tPAによってinfarct growthを有意に抑制できることを示し、今後、mismatchコンセプトに基づいた新たな大規模臨床研究(EXTEND)の必要性を語られました。

今年のISCの特徴として様々なディベートセッションが企画されていたことがあります。なかでも、急性期治療の適応判定に関する画像診断についてはdelayed interventionを行う際にはMRIによるpenumbral imagingが不可欠とする立場(前述のStephen Davis教授)と単純CT一枚の情報で十分とする立場(William Powers教授)で議論が交わされました。

様々な研究の最新成果をいち早く聴講することができるのも、本学会に参加する大きなメリットです。アルガトロバンとアルテプラーゼの併用療法を検討したARTSS(ARgatroban TPA Stroke Study)では、アルガトロバンの併用は少なくとも安全性を担保しつつ再開通率を向上できる可能性が示されました。日本からもEVEREST研究のEssen Stroke Risk Scoreによる解析や、徳島大学脳神経外科から選択的アルドステロン拮抗薬:エプレレノンを用いた脳動脈瘤治療など、多数の研究成果が発表されていました。

EC/ICバイパスの多施設共同研究COSS(Carotid Occlusion Surgery Study)は、約5,000例をスクリーニングした後、PETでOEF上昇が確認された195症例を対象に実施されましたが、残念ながらEC/ICバイパスの効果は否定されました。JET studyの成果を早急に世界に発信しない限り、EC/ICバイパスそのものが葬り去られかねないと危機感を持ちました。

脳卒中急性期の降圧に関するACCESS研究(2003年)で注目されたARB:カンデサルタンについては、今回SCAST(Scandinavian Candesartan Acute Stroke Trial)の結果が発表されました。欧州9カ国146施設から2,029症例がエントリーされましたが、残念ながらカンデサルタンの効果は示されませんでした。

例年、多くの聴衆が集まるLate-breaking scienceセッションですが、今年はエポックメイキングな内容に乏しかったためか、低調であった感は否めません。しかし学会最終プログラムDavid G. Sherman Lectureでのスタンフォード大学Gregory Albers 教授のお話は、それを補って余りある熱のこもったものでした。4つのT(Technology, Terminology, Tissue and Time)をキーワードにnew definition of TIA、penumbral imaging、mechanical recanalizationなどup-to-dateな内容をユーモアも交えながら次々に紹介され、これだけで参加して良かったと思わせる内容でした。

次回のISCはNew Orleansで2012年2月1-3日に開催予定です。今年以上に日本からの素晴らしい成果が発表されることを期待したいと思います。


写真1:筆者記録写真

写真2:学会場となったLos Angels Convention Center

写真3:Albers G教授のレクチャーの様子

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