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神経治療最前線 海外学会参加報告

WCN2019

World Congress of Neurology 2019, WCN2019

WCN2019に参加して

福島県立医大神経再生医学講座
宇川 義一

World Congress of Neurology 2019, WCN2019
Dubai, UAE
27-31 October, 2019

World Congress of Neurology 2019, WCN2019

 2019年10月27日から31日にドバイで開催された世界神経学会(World Congress of Neurology 2019, WCN2019)に参加してきたので、その印象などを記載する。2020年1月22日にこの原稿を書いているが、自分の記憶の危うさを感じている。学会直後、編集委員の織茂先生からお話をいただき、こんなことを書けば良いのかなと考案していたが、3ヶ月もたつと、何を書こうかな、どの写真が良いかなと、考え直さないとアイデアがすぐに出てこない状態である。自分の海馬にアミロイドが集積しつつあるのか、ヒトの記憶はこの程度の曖昧さがあるのか、我ながら心配である。そんな状況だが、今でも思い出せる印象に強く残ったいくつかの項目について書いてみる。

 WCN2017が京都であったこと、会長である水澤先生のもと私がプログラム委員長を努めていたことなどがあり、今回は招待されたと思う。前回は主催者側で、たくさんの参加者に来ていただけるか、何か問題が起きないかなど、緊張していたが、今回は気楽に参加できたのが一番印象的であった。そこで、第一に強烈に記憶に残ったのは、ドバイという町、アラブ首長国連邦という国のことである。とにかく熱い、そしていかにも砂漠に町を人工的に作ったと言う印象が強い。ホテル、列車の駅などは冷房されているのはもちろんだが、ホテルと駅を結ぶ通路も、外気にあたりながら歩くと言う日本のイメージではなく、駅とホテルを結ぶ冷房完備の筒状の通路が作られていて、そのトンネル中を通りぬけてホテルに到着するというのが普通である。もちろん、外に出て行くことも可能だが、一回試してみると、二度とやらない方が良いと実感するほどである。ドバイに行く一週間前位にテレビで放映されていた以下のことを実感した。日本では、高層ビルがあると最上階の景色が良くて、最上階の部屋の価格が一番高いのが普通であるが、ドバイでは違うというのである。砂漠の中に、ある範囲で人工的に町を作っているので、最上階では町の外の砂漠まで見えてかえって景色が悪い。中間あたりの階の部屋が町の端まで見えて、しかもまわりの砂漠が見えないので、価格が一番高いと言うのである。確かに、人工的ながら、良くもここまで作ったものだと感激した。冷房のことを考えると、ここでは発電が重要で、停電すると生きていけないかもしれないと思った。非常に近代的な洗練された空間である。最も有名なのが写真1に示すビルであろう。トムクルーズが落ちる映画で有名なビルである。この屋上まで見学に行く時の話で、この国の二番目の印象を得た。料金により差別するのが当たり前ということである。人気の観光スポットで多くの観光客が押し寄せる。そこで、普通に待つとエレベーターに乗るまでに二時間待ちをしたりする。ところが二万円くらいの料金を払うと殆ど待たずに他にルートで屋上まで見学できて、上でアフタヌーンティーをいただけると言うのである。万事料金による印象をもった。ある意味、合理的とも言えるが、日本人には少し違和感があるかもしれない。学会場は近代的でコンパクトにできていて、Wi-Fiも完備されていて、素晴らしい会場であった。京都の会場のWi-Fiの状況を学会業者が心配していた意味がわかった気がする。

 会議としての学会の印象は、京都で自分がプログラムを組んだ時と同じで、臨床に即したテーマを様々な観点から取り上げていて、一度の学会で神経内科疾患全体のupdateができるように組まれていると言う感じであった。頻度の高い神経疾患(脳血管障害、てんかん、パーキンソン病、認知症など)を単位としてシンポジウムが組まれていて、病態・診断・治療とそれぞれの最新の知識が披露されていた。講演者に関しては、開催地区の先生方が講演している頻度が高いと言うこれまでの学会の特徴と同じであった。日本の学会の時に旅費の観点から日本人の講演が多かったが、今回は日本人があまり講演者としていないのは、京都での僕の采配に対する反発なのかもしれない。個人的にプログラムで気になったのは、臨床神経生理というテーマがなくなっていたことである。WCN2017までは臨床神経生理と名が付くセッションがあったのだが、今回からなくなっていた。それぞれの疾患の診断のところでばらばらに神経生理の話はあるのだが、臨床神経生理としてまとめたセッションがないのである。聴衆の数が多くないというこれまでの調査結果からこの結論にいたったのである。日本でのWCN2017の時は、私の意見で維持したのだが、とうとうなくなったかと実感した。私自身もリハビリのセッションで、磁気刺激の話をしたのである。この点は、生理を専門とする私にとっては、寂しい次第である。もう一つ、この学会で興味を持っているのはTournament of Mind と言うプログラムである。神経内科の問題を、国別対抗で回答して争うアトラクションである。ロンドンのWCN以来毎回行われているもので、以前回答者として参加したが、京都の時は出題者の役割をした。その時の日本の責任者であった山口大学の神田隆先生が、今回も問題作成に関わっていた。今回は問題作成が日本の時ほどスムーズではなく、日本の時に作成したが採用しなかった問題も一部使用したときいている。日本人の勤勉さには感服する。

 学会の目的の一つに、多くの友人と友好を深めることができるということがある。今回の懇親会は先ほどビルの直下で夕方に開催されて、ライトアップされたビルがきれいであった。写真2は、ライトアップされたビルと水面にそのビルが映る風景である。そこで、全世界の多くの友人と再会できたことも印象に残っている。アジアオセアニア、北米、南米、ヨーロッパと様々な国の先生と話をした。そのなかでも、お二方ともworld federation of neurology (WFN)のプレジデントを以前されていた木村淳先生、マークハレット先生と再開した。お二人とも、一年間に何回もお会いするが、今回は特殊な環境でお会いしたので、印象に残った(写真3)。

 以上、私の印象の残っていた事項を述べた。

写真1

WCN201991-3

写真2

WCN201992-2

写真3

WCN20199-3

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